傷病手当金と障害年金は一緒にもらえる?
傷病手当金と障害年金の受給期間が重なる場合、どちらか一方のみに併給調整される可能性があり、注意が必要です。今回は、傷病手当金の概要や障害年金との併給調整の注意点などについて解説していきます。
傷病手当金とは
- 概要
- 健康保険加入者が業務外の病気や怪我で仕事を休むことになり、給与がもらえない時に、健康保険の標準報酬日額(直近1年の平均給与の日額程度)の2/3(約67%)を受給できる給付金です。
- 対象者
- 勤務先で下記の健康保険制度に加入している者
- 協会けんぽ(全国健康保険協会)の加入者
- 健康保険組合の加入者
- 共済組合の加入者(公務員)
※上記加入者に扶養されている方は対象外です
- 支給期間
- 連続する休業4日目から最長1年6カ月間受け取ることができます。
(最初の休業3日間は待期期間となり給付されません)
※参照:病気やケガで会社を休んだとき | こんな時に健保 | 全国健康保険協会 (kyoukaikenpo.or.jp)
障害年金とは
- 概要
- 障害基礎年金と障害厚生年金があり、障害があると最初に診断されたときに加入している公的年金によって支給される年金の種類が異なります。
- 障害基礎年金…初診日に原則国民年金に加入している方がもらえる年金です。
- 障害厚生年金…厚生年金に加入している方を支給対象とした年金です。障害基礎年金に比べ、支給対象となる障害の範囲が広く、比較的軽度の障害でも支給される可能性があります。
- 対象者
- 障害基礎年金は自営業の方や無職、個人事業主の方が対象となり、専業主婦や20歳前に傷病を負った方も障害基礎年金の支給対象に該当します。障害厚生年金の対象者は障害の原因となった病気や怪我の初診日に障害厚生年金の被保険者が該当します。
- 支給額 ※2024年4月現在 (毎年改定)
- 障害基礎年金(国民年金)
1級 |
1,020,000✛子の加算 |
|
第1・2子 |
各234,000 |
2級 |
816,000✛子の加算 |
|
第3子以降 |
各 78,300 |
- 障害厚生年金(厚生年金)
1級 |
(報酬比例の年金額)✕1.25+[配偶者の加給年金額] |
2級 |
(報酬比例の年金額) +[配偶者の加給年金額] |
3級 |
(報酬比例の年金額) ※最低保証額612,000円 |
※配偶者の加給年金額
1級・2級の場合のみ |
234,000円 |
※2024年4月現在 (毎年改定)
- 支給要件
- 初めて障害を診断された日に国民年金か厚生年金に加入していること
- 保険料の未納が一定期間ないこと
- 障害年金をもらうに値する障害を持っていること
傷病手当金と障害年金の違いは?
- 支給期間
- 傷病手当金:最短4日目~1年6カ月
- 障害年金:1年6カ月から申請ができ、受給できるまでに一般的に4~6カ月ほど時間がかかる。もらえる期間は障害年金をもらうに値する障害を持っている間支給される
- 対象の状態
- 傷病手当金:働けない状態かつ給与が支払われていない
- 障害年金:障害等級に該当する状態 ※日本年金機構の障害認定基準
- 支給額
- 傷病手当金:直近1年の平均給与日額程度の2/3
- 障害年金:等級によって異なります(上記支給額参照)
傷病手当金と障害年金の併給調整
同じ傷病が原因で傷病手当金と障害厚生年金の受給期間が重なり、重複して受給できる場合、「併給調整」が行われます。
【傷病手当金が障害厚生年金より多い場合】
傷病手当金の日額と、障害厚生年金の日額を比較して、傷病手当金の金額の方が多い場合は、その差額が傷病手当金として支給されます。
【傷病手当金が障害厚生年金より少ない場合】
傷病手当金の日額が障害厚生年金より少ない場合、障害厚生年金が満額支給されて、傷病手当金は支給停止となります。
この併給調整されるのは障害厚生年金のみなので、障害基礎年金だけを受給している方の場合は併給調整は行われません。
つまり、障害基礎年金のみ受給者の場合、同一傷病で傷病手当金を支給されることになった場合は、どちらも全額受け取れます。
【障害年金を遡及請求した場合】
遡及請求により障害年金と傷病手当金の支給対象期間が重なっていた場合、過去の重複期間に受け取った傷病手当金の一部または全部を健康保険に返還義務が生じます。
お問い合わせください
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- 傷病手当金と障害年金は病気や怪我で受け取れる点は同じですが、給付対象の時期がケースごとに違い、障害年金の請求時期によっては併給調整が入る場合もあるので注意が必要です。ただ、障害年金は請求準備だけで2~3カ月程、その後、実際に年金が支給されるまでに早くても3カ月程かかりますので請求手続きのタイミングを理解していないと生活に困窮する可能性もあります。障害年金の申請は一度不支給になるとその後の申請の難易度が上がるため、傷病手当金を受給した後の相談は障害年金の申請ができる社労士に相談することをお勧めします。
最終更新日 4か月